資産家が知っておきたい税制改正(2022年)Vol.1
2022年2月
2022年の税制改正大綱について、
税理士法人タクトコンサルティングの高木真哉先生からお話を伺います。
タクトコンサルティングは、資産税専門のコンサルティング・ファームです。
弊社SBBのサポート企業でもあり、SBBの活動を応援してくれています。
また、タクトコンサルティングは「タクト奨学金」を設け、社会貢献活動にも熱心に取り組んでいます。
「タクト奨学金」は、向上心がありながらも経済的支援を必要としている会計税務分野の資格取得を目指す若手人材に、返済義務のない奨学金を支給しています。
日本の会計業界に有能な人材を輩出させたい、という熱い想いが感じられます。
東
まず、昨年末に出された税制改正大綱ですが、大枠の印象はいかがでしょうか?
高木先生
賃上げ税制は盛り込まれたものの、全体的には今年の選挙を意識してか、驚くような改正はありませんでした。しかし今後は富裕層からしっかりと税金を取る、というスタンスが表れたようにも思えました。
東
そうなのですね。例えば、企業経営者や富裕層の人にとって、影響がありそうな改正点はどのようなものでしょうか?
高木先生
いくつかポイントはございますが、今回は以下の3点について解説させていただきます。
- 財産債務調書
- 贈与税一体課税
- 金融所得課税
東
まず、財産債務調書について教えていただけますでしょうか?
高木先生
これまでは財産が3億円(有価証券の場合は1億円)以上あっても、所得が2,000万円を超えなければ税務署に財産債務調書を提出する必要はありませんでした。
そのため、意図的に所得を減らして提出を回避されている方も少なからずいらっしゃったと思います。これが、所得額にかかわらず財産が10億円以上ある方も提出義務者に追加されました。
財産が10億円以上ある方は必ず財産債務調書を提出することになります。余談ですが、今回の改正で税務署の富裕層の基準が10億円だということが分かりました。
東
なるほど。富裕層の中でも、資産額によって新たな線引きが生まれたのですね。
次に、贈与税一体課税について、教えていただけますでしょうか?
高木先生
わが国では、相続税と贈与税が別個の税体系として存在しており、贈与税は、相続税の累進回避を防止する観点から高い税率が設定されています。このため、将来の相続財産が比較的少ない層にとっては、生前贈与に対し抑制的に働いている面があります。
一方で、相当に高額な相続財産を有する層にとっては、財産の分割贈与を通じて相続税の累進負担を回避しながら多額の財産を移転することが可能となっています。
日本政府は、米国、ドイツ及びフランスなどのように相続税と贈与税をより一体的に捉えて課税することで、資産の移転の時期(回数・金額含む)にかかわらず、納税義務者にとって、生前贈与と相続を通じた資産の総額に係る税負担が一定となる(これを「資産移転の時期の選択に中立的」という)税制を構築しようと検討を進めています。
昨年10月発表の自民党の総合政策集にも「資産移転の時期に中立な制度の構築に向け、検討を進めます。」とあります。将来的に「相続税と贈与税を一体と捉えて課税」するための贈与税の改正が行われるのは確実と思われます。
富裕層の方にとっては、これまでの相続対策を抜本的に見直すことになるかと思います。
東
これは大きな改正ですね。しっかりと理解しておきたいところです。
最後に、金融所得課税のあり方についての検討開始、とはどういうものでしょうか?
高木先生
高所得者の方は、所得に占める金融所得(総合課税ではなく、20%の分離課税)の割合が高いことから、所得税負担率が低下する状況(「1億円の壁」と言われるものです)がみられます。
例えば、給与として1億円を受け取ると、所得税(総合課税)と住民税とを併せて5,000万円程度になりますが、上場株式の売却益で1億円を受け取ると、所得税(分離課税)と住民税とを併せて2,000万円程度で済みます。
同じ1億円の所得であっても、税負担が異なることから、金融所得課税のあり方の検討を開始することになりました。
私見ですが、コロナもあり日本の財政は相当傷んでおりますから、その回復のためには、富裕層からしっかり税金を取るというスタンスが見えたように思います。
東
これも金融資産を多く保有する資産家の方には大きなインパクトになりそうです。とても参考になりました。有り難うございました。
上記3点は企業経営者や富裕層の人にとっては、大きな改正点です。
私のようなプライベートバンカーにも、必須の知識になります。これからも時代の流れを感じ取りながら税務知識をアップデートしていきたいと思います。
高木先生
企業経営者や富裕層の方はお忙しいかと思いますので、税務知識をアップデートするにも限界がございます。このような方々に日頃接する機会が多いプライベートバンカーの皆様にも、是非知っておいてもらえたら幸いです。
私どもは資産税の専門家です。資産税に関するアドバイスを日本全国の税理士事務所(557社:2022年1月現在)と提携して行っておりますので、お気軽にご質問ください。
東
有り難うございます。本当に心強いです。
今回は高木先生より税制改正大綱でアナウンスされた、資産税に関する3つの改正点を教えていただきました。
日本全国の税理士事務所が頼りにしているタクトコンサルティングさんから、今後も新しい情報をお届けいたします。引き続き宜しくお願い致します。
本日はお忙しいところ本当に有り難うございました。
高木先生
次回は違うポイントをご案内させていただきます。有り難うございました。