タイのメーソート(Mae Sot)にて
2023年7月
ミャンマーは人口5,700万人、面積は日本の1.8倍である。
135の少数民族が存在しているが、現在の政権を支配しているのは最大勢力のビルマ族(約68%)である。長い軍事政権時代から、一時的に民主化に移行したものの、2021年2月に軍部のクーデターにより、再び軍事政権が誕生した。
全土で抗議デモ、紛争が勃発している。特に軍部に抵抗する少数民族は弾圧される。軍事政権に反対する少数民族の村は焼き払われる。軍用機からの空爆もあり、一度に多くの人が亡くなっている。
彼らの一部は命からがらジャングルを抜けて、タイ側に避難してくる。
タイ北部のミャンマーとの国境近くにあるメーソートという街は、多くのミャンマー難民が不法に滞在している。この街はミャンマー難民の労働力によって経済が成り立っているが、彼らは身分が保証されていないため、安心して生活することができない。
そして、この街に彼らの子ども達がたくさんいる。
私の所属するNPOはこの地域で約15年前からミャンマー難民の子ども達や学生を支援している。
今から13年前、1,000人以上の学生が通う現地最大の学校を建設した。
他にも難民の中でも特に虐げられているイスラム系の子ども達の学校を建築し、継続的に支援している。優秀な学生のために、タイの大学受験に向けた予備校も運営している。毎年、この予備校の学生(25人前後)の寮費、食費、先生の給料などの運営費を支援している。
この学校だけでも年間維持費は約100,000ドル。そして大学に行く学生には毎年2名分の奨学金を出している。毎年の奨学金は64,000ドル(8,000ドル×2名×4年間)になる。
6月下旬、約4年ぶりに私は現地を訪問した。
上記3校の運営状況の確認や今後の対応を話し合うためである。コロナ前に比べて状況は悪化している。ここでは現地の状況を細かく記載することはやめておこう。
彼らの置かれている状況は困難である。そんな中でも希望を持って勉学や職業訓練に励む若者たちを見て、彼らの逞しさを実感する。職業訓練学校では、自分たちで手作りの卒業式をしており、その歌声や踊りを見て胸が詰まる。
バンコクやチェンマイで、運営する予備校からタイの大学に進学した学生や卒業生に会って話を聞いた。彼らは自分の幸せだけでなく、自分が育ったコミュニティや次世代に貢献したいと切に願っている。
バンコクの大学に通っている一人の女学生は、故郷のミャンマーの村からタイに入国する際に、政府軍に捕まり3日間ジャングルの小屋に閉じ込められた。捕まったメンバーの一人が少数民族の高官であったため、交渉の結果、解放されたらしい。つい最近の話である。彼女は大学を卒業してNGOで働きたいと言っている。
メーソートに来ると、いつも多くの子ども達や学生に出会う。
彼らは自らのアイデンティティを大切にし、高い意識で勉学に励み、平和を望んでいる。
私はいつも彼らから多くの事を学ばせてもらっている。