理想を追いかけるバンカー

 

私はソーシャルビジネスに熱い想いのある、人生の先輩と会う機会を大切にしている。

先日、大阪商工信用金庫の片桐会長を訪問した。
大阪商工信用金庫がソーシャルビジネスに力を入れているという情報だけは知っていたのだが、どのような取り組みをしているかは詳しく知らなかった。

片桐会長は住友銀行の支店長をいくつか経験した後、大阪商工信用金庫で働き始めて29年になるという。当時の大阪商工信用金庫は規模が小さかったらしい。

それから、社員、お客様、社会を良くしたいという「三方よし」の想いで、実直に活動してきた結果、地域で頼られる信用金庫に成長した。片桐会長とお話をしていると、心の底から、「三方よし」を強く思っていることが分かる。

私の知る限り、当時の住友銀行は数字としての成果を追いかける文化であったが、片桐会長は違うようだ。人との信頼関係や地域への貢献、地域金融機関の役割といった明確な社会的使命感を持っている。片桐会長はご自身でも「きれい事ばかりをいつも言ってきた」という。

新しく建築された本社ビルの横には建築家今井兼次氏による「糸車の幻想」がある。

東洋紡本町ビルの屋上レリーフをそのまま移築し、市民の憩いの場として24時間開放している。
通常、このような一等地であれば、賃貸ビルでも建てた方が企業にとっては収益性が高いだろう。

しかし片桐会長は「芸術文化を後世に伝えていきたい。都会の中で誰もが安らげる空間を作りたい。」という想いを優先した。

経営者は誰よりも想いが強くないと、そのフィロソフィーは部下に伝わらない。
中途半端な想いは、人の心に届かない。片桐会長のように強い想いを発信することが重要である。

 

私はUBSやクレディ・スイスといった富裕層を対象とするプライベートバンカーを退職して、NPOやソーシャルビジネス起業家との付き合いが多くなった結果、改めて地域金融機関の大切さを実感する。

大企業といえども地域の中小・零細企業、ベンチャー企業とのつながり無くして、ビジネスは成り立たない。そこに資金を循環させている信用金庫の存在意義は、とてつもなく大きい。

大阪商工信用金庫は、「大阪商工信用金庫社会貢献賞」を贈呈している。
① 地域貢献の部門と
② ソーシャルビジネス部門がある。
また職員、OB、OGが資金を拠出して「さくら賞」も贈呈している。
職員までもが資金拠出しているのが面白い。

 

片桐会長はソーシャルビジネスの生みの親であるグラミン銀行創設者のムハマド・ユヌス博士が来日したとき、大阪での講演会をアレンジしたという。知人である大学理事長にお願いして大学の講堂を貸してもらい、多くの人を集客したらしい。

丁度、私がUBS銀行に勤務していたときで、UBS銀行でも同じタイミングでユヌス博士のイベントを開催したことを思い出した。片桐会長とムハマド・ユヌス博士の出会いや銀行員としての社会的使命のお話を伺った。本当のバンカーに出会えた喜びを感じた。

今まで多くの銀行員と話をしてきたが、片桐会長ほど、型にはまらず、大きな理想を掲げる人情味のあるバンカーに出会える機会はめったにない。何よりも理想だけでなく、実績を残している。

 

一般的に経営者は若い方が良い、と言われる。
それは年齢が高くなると、新しいことに挑戦しなくなる傾向があるからである。
結果として、組織が硬直化し、社会的ニーズに対応した新しい取り組みが遅れてしまう。

時代が動いている中で「保守的」という言葉は、イコール「衰退」を意味する。
では、若い人がいつもチャレンジ精神を持って、正しい判断をするかいうと、それも違う。
要は、バランスである。

年齢が高くても、発想が柔軟で、つねに勉強をして、新しいことに挑戦している経営者を何人も知っている。
つまり経営において大事なのは、年齢ではなく、常にお客様のことを考え、自社に改善を加えながら、次の時代を読んでいくセンスと実行力である。

そのような意味においては、片桐会長が大きな理想を持って、高い視点から金融機関の経営をしている姿を想像すると、同じ金融マンとして理想像を追いかけている私までもが、誇り高い気分になる。

これからもどんどん独自性を発揮しながら、
社員・お客様・地域が喜ぶ信用金庫になってほしいと願っている。

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ムハマド・ユヌス様

グラミン銀行創設者
ノーベル平和賞受賞者

公益財団法人 千本財団

第二電電(現KDDI)、イーモバイル(現ワイモバイル)創業者、レノバ名誉会長
千本倖生様

第二電電(現KDDI)
イーモバイル(現ワイモバイル)創業者 
レノバ名誉会長  千本倖生様

一般財団法人 
こどもたちと共に歩む会

第二電電(現KDDI)、イーモバイル(現ワイモバイル)創業者、レノバ名誉会長
千本倖生様

第二電電(現KDDI)
イーモバイル(現ワイモバイル)創業者 
レノバ名誉会長  千本倖生様

一般社団法人 
明日へのチカラ

ロート製薬創業家  
山田安廣様

一般財団法人
チャイルドライフサポートとくしま

大塚製薬創業家  
大塚芳紘様

公益財団法人 
木口福祉財団

ワールド創業家  
木口由美様

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オートバックス創業家  
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東京コミュニティー財団

東 信吾
Azuma Shingo

一般社団法人ソーシャルビジネスバンク
代表理事

 

【経歴】
1974年生まれ
大阪大学経済学部卒、大和銀行(現りそな銀行)、シティバンク、日本不動産研究所、UBS、クレディ・スイス(西日本地域の営業責任者)

社会活動家/プライベートバンカー/不動産鑑定士

大学生の頃よりプライベートバンカーを志向する。
UBSアジアパシフィック地域において7年連続「ドラゴンクラブ」を受賞(日本人初)。
2015年、世界のトップバンカーの一人として「UBSサークルオブエクセレンス」を受賞
(唯一の日本人プライベートバンカー)。

2008年よりNPOのスタッフとして、タイ、ラオス、ミャンマー、カンボジアにおける社会貢献活動に参画。

2012年よりバングラデシュにて、グラミン銀行創設者でノーベル平和賞受賞者であるムハマド・ユヌス博士と自動車整備士養成プロジェクトを運営。

日本アントレプレナー大賞ソーシャルビジネス部門を創設(審査責任者)。
ソーシャルビジネスの普及活動に専念。


2022年より社会に「温かいお金」と「想い」を循環させることを目的に、一般社団法人ソーシャルビジネスバンクをスタート。日本で初めて金融商品仲介業を株式会社でなく、一般社団法人にて運営(組織形態及び定款は非営利徹底型)。


この法人では、

  1. 富裕層や企業オーナーを社会貢献活動の世界に導く
  2. 富裕層や企業の社会貢献活動をお手伝いする
  3. 金融商品仲介業務で得た法人利益から法人税納税後の内部留保の半分以上を、顧客の希望に即した社会貢献活動に充当する
自身は上記3事業を無報酬(ボランティア)で行っている。


(公財)東京コミュニティー財団理事
(公財)千本財団理事
(一社)明日へのチカラ理事 ほか

世界4大会計事務所のひとつであるEYグループの日本法人(EYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社)シニアフェロー

 

東信吾/azumashingo