人生をバランスさせる均衡点とは?

人生をバランスさせる均衡点とは?

 

人生の先輩が体調を壊してから10年近くになる。
私は毎年のように先輩のご自宅を訪問し、先輩が過去に行った社会貢献活動の現状報告を行ってきた。

今回の訪問も、先輩が10年前から続けている活動の報告とSBBの「2022年の活動報告」を届けるのがメインである。

 

夕方、先輩のご自宅を訪問する。

会話の途中で、「そろそろ寄付活動を再開しようと思っています。東さんが今取り組んでいるプロジェクトは何ですか?」と質問があった。

そこで「一般社団法人明日へのチカラ」が運営している「ドコデモこども食堂」を案内した。

他にもいくつかの団体を紹介したが、今回は私が関わるプロジェクトにご寄付いただけるとのことである。
私は「先輩はもう新しい寄付活動をしない」と思っていた。

そして10年ぶりに外食に誘われた。体調が良くなってきたようである。
自宅近くの飲食店に行った。先輩の足取りは10年前と違い、ゆっくりである。

 

お店では、ビールジョッキを片手に
東「今日は有り難うございます!」
先輩「よう来てくれました!」と乾杯する。
この瞬間が再び来るとは思ってもいなかった。

 

先輩は歴史に造詣が深く、地元の歴史の話をしてくれた。とても面白い。

会話の中で先輩から「東さんは裏と表がないから信頼できる。天然(てんねん)です。女性の天然は見かけるけど、男の天然は珍しい。」とのお褒めの言葉?をいただいた。

私はその言葉を聞いた瞬間、目から涙が溢れ出た。涙が止まらない。私はこの10年間、先輩の社会貢献活動を守ってきたという自負があった。それをこのような言葉で認めてもらえたことに感極まった。

きっと先輩も驚いただろう。先輩は私のことを単に「天然」と言っただけである。そうすると、目の前の中年男性が急に泣き出したのである。何とも恐ろしい光景である。

 

19時30分、先輩の奥様がお店まで迎えにきた。
私は新幹線で神戸まで帰ることになっていたため、夕食会はお開きとなった。

私は別れを告げたあと、先輩と奥様が夜道をゆっくりと帰宅する姿を見えなくなるまで見送った。

 

(数日後)

 

私は別件でアフリカでソーシャルビジネスを立ち上げた女性起業家を連れて、女性篤志家のご自宅を訪問していた。従前より女性篤志家はこの女性起業家を応援しており、アフリカでの活動報告を聞いた後、気持ちよく120万円を女性起業家の活動にご寄付してくれた。とても有り難い。

その帰り道、私の携帯電話が鳴った。先日の人生の先輩からである。
先輩「今日、銀行口座にお金を振り込みました。500万円です。ドコデモこども食堂に使ってください。」
私は金額の大きさに驚くとともに、大切に使わせていただくことを先輩に約束した。

 

私たち社会活動家は、命の次に大切なお金を「寄付金」という形で預かっている。
この「温かいお金」と「想い」を社会の中で光があたらない場所に届けている。

「温かいお金」と「想い」をきっちり届けることで、寄付者は「寄付をして良かった」と思う。
その気持ちの蓄積が寄付者の人生をより豊かにする。

心が満たされる寄付や社会貢献活動は、天秤に例えると「長い人生を良い方向にバランスさせるための片方の重り」だと思っている。

 

人はそれぞれ社会への貢献の仕方が異なるが、社会や他者を想う気持ちを持つ人は「片方の重り」の存在に気が付いている。自分の事だけを思っていると、天秤が傾いたままである。

私の役割は、この「片方の重り」の存在を多くの人に知ってもらい、その重りを微調整することである。
一般的な重りは、物理的な重さだけを表示するものであるが、寄付者の人生観が詰まった重りは、様々な色や形をしている。

私はこれからも、寄付者の想いが詰まった重りの色、形、重さを微調整し、人生の均衡点を見つけていくお手伝いをしていきたい。