【東信吾コラム】元スイスプライベートバンカーの幸せ探訪 Vol.5 社会を想う富裕層に求められる金融機関とは?
2024年8月
当ページは、弊社代表の東が楽天証券の一部のお客様に向けて配信している
【東信吾コラム】を掲載しております。
近年、金融機関は収益獲得に向けて、富裕層をターゲットとした営業に力を注いでいる。
私も以前はプライベートバンカーとして富裕層のお手伝いをしていたが、現在は引退しており、いくつかの企業の顧問でアルバイトをしながら、ほとんどの時間を社会貢献活動に費やしている。
私は、いくつかの金融機関から「どのように富裕層営業を展開したらよいか?」と質問を受けることがある。ある銀行では役員会でプレゼンまでさせてもらった。その都度、「富裕層営業をしたいなら、お客様と一緒に社会貢献活動を実践する担当者(部門)を作ってください」と提案している。
しかし、金融業だけに取り組んできた専門家にとって、お客様を社会貢献活動にいざなうことに、いったいどれほどの意味があるのかは、なかなか理解してもらえない。
金融機関の心の内では、
- 社会貢献活動を推進するといっても、そのやり方が分からない
- すぐに金融商品を販売できるわけでなく、足元の利益につながらない
- 社会貢献活動のような「ふわっとしたこと」に余分な時間と費用を割きたくない
など、取り組まない理由がたくさん出てくる。
では、次に私が金融機関に質問してみよう。
- お客様に長期的なファンとなってもらいたいと思わないですか?
- 他の金融機関がしていない差別化をしたいと思わないですか?
- あなたが社会の幸せを願う富裕層なら、どの金融機関を選びますか?
どうだろうか。
社会を想う富裕層の立場から見たときに、選ばれる金融機関となる努力を怠っていることが露呈してしまうだろう。
多くの富裕層も社会貢献活動と聞いて、「赤十字やユニセフに寄付するの?」「海外で学校を建てるの?」「こども食堂をサポートするの?」などと身近なイメージが湧くものであるが、自分の想いを実現できる活動内容を自分で作っていけることに気が付いていない。
その人の考え方にあった社会貢献活動をデザインしていくことで、その人は残りの人生をより豊かに生きることができる。こんなことを一緒に考えてくれるプライベートバンカーが身近にいると、お客様はお金で買えない幸せを手にすることができる。
私はUBSやクレディ・スイスでのプライベートバンカー業を引退したとき、「肩書きがないと富裕層と出会えないのではないか?」と心配したが、杞憂に終わった。むしろ引退後に社会貢献活動に注力することで、UBSやクレディ・スイスでは会えなかったようなスケール感の大きな方や社会意識の高い方との出会いが待っていた。
金融機関は多くの富裕層が望むことを躊躇していると、時代の波に取り残されてしまう。私は遠くの場所から「私の声が金融機関に届くのはいつだろうか?」と眺めている。
一般社団法人ソーシャルビジネスバンク
代表理事 東 信吾
社会活動家/プライベートバンカー/不動産鑑定士
編集協力:グレートワークス株式会社
プロボノ活動として本記事の執筆を支援しています