【東信吾コラム】元スイスプライベートバンカーの幸せ探訪 Vol.2 自分を幸せにする社会貢献活動
2023年10月
当ページは、弊社代表の東が楽天証券の一部のお客様に向けて配信している
【東信吾コラム】を掲載しております。
人生の先輩:ロート製薬の創業家。現在のロート製薬の礎を作る。
私は、社会をより良くしたい人たちと毎日のように会っている。
今から3年前、現役を引退した人生の先輩から「未来を担う子どもたちのために何かできないでしょうか?」と相談を受けた。私は「信頼できるNPOの代表を何名か紹介しますので、ご自身が関心のある社会貢献活動をイメージしてください」と答えた。
人生の先輩は、あるNPOの女性代表に会い、乳児院や児童養護施設などで保護されている子どもたちが国内に4万2千人もいることを知った。その半数以上は親からの虐待である。
先輩は、子どもたちが親や周囲の大人たちに愛されて育つ環境が必要であることを実感した。そして自分にも何かできないかと考え、全国で活動する子ども支援団体をサポートするための中間支援団体を立ち上げることにした。
準備期間を経て、今年2月、地域の子ども支援団体と一緒に、子どもたちが地域の飲食店でいつでも食事ができる仕組み「ドコデモこども食堂」がスタートした。
自らが子ども食堂を運営するのではなく、全国各地で子ども支援をしている団体と地域の飲食店が協力して、子どもたちに食事を提供する活動である。
プロジェクトをスタートしてから、ドコデモこども食堂を運営するためのミーティングが頻繁に行われるようになった。コンセプトの立案のみならず、利用者が使いやすいシステムの構築、全国の子ども支援団体との連携、規約の作成など、やるべきことがたくさんある。ありがたいことに、当面は人生の先輩が活動費を拠出してくれる。
私もボランティアで運営をお手伝いしており、昨年末のクラウドファンディングでは、全国から3,600万円以上の応援資金が集まった。とてもありがたい。
人生の先輩は、いつも言う。「ドコデモこども食堂を運営するメンバーは、自分の意見に固執したりせずに、同じ方向を見て議論ができる。とても気持ちがいい」と。
先日、人生の先輩の奥さまにお会いする機会があった。「この活動を立ち上げてから、主人はいつも楽しそうにしています。仕事を引退してからも、多くの刺激を受けています。本当にありがとうございます」。その言葉が、私にはとても嬉しかった。
寄付や社会貢献活動を始める人は、自身が楽しめないと、活動は続かない。
寄付者は、自身の大切なお金を寄付する。そのお金がどのように社会で有効に使われているかを実感することで「もっと支援しよう!」と思うのである。
私が寄付者とNPOをつなぐときに一番大切にするのは、寄付者の「心」である。なぜなら、社会が良くなる循環の起点は、寄付者の自発的な「想い」だからである。私は寄付者の想いを十分に理解してから、寄付者とNPO代表を一人ずつ丁寧につないでいく。この二人の想いがうまく繋がると、寄付者のお金が「温かいお金」として社会に循環する。寄付者は、寄付によって社会がより良くなる様子を見るだけでなく、その活動に関わる人の真摯さに触れ、豊かな気持ちになる。
時代の流れが極めて速く、効率や生産性が求められる現代社会にあって、私の取り組みは明らかに非効率なものに違いない。
でも、私は寄付者の満足感を大事にすることで、「社会貢献活動はとても楽しい!」と喜んでもらいたい。それが私の生きがいである。
私は、人から「よくボランティア活動ばかりできますね」と言われる。
私はいつも同じ返事をする。「いえいえ。一番楽しいのは私なのです」と。
一般社団法人ソーシャルビジネスバンク
代表理事 東 信吾
社会活動家/プライベートバンカー/不動産鑑定士
編集協力:グレートワークス株式会社
プロボノ活動として本記事の執筆を支援しています