想いを伝える遺言書
2025年3月
広島に住む友人からメッセージが届いた。
「本日、相続人の前で遺言書の開示が行われました。おかげさまで円滑に相続手続きが進みそうです。〇〇銀行を紹介してくれて、本当に有り難うございました。」
今から2年前、友人(女性)は父の相続を気にかけていた。友人には弟がいるものの、血はつながっていない。父の事業は弟に引き継がれており、自社株も贈与済みである。父は自分の金融資産と不動産に関しては、毎週病院まで様子を見に来てくれる友人(娘)に多くの割合を残したい意向のようであるが、遺言書はまだ書いていなかった。友人は父に向って「遺言書を書いてほしい」と言えずに悩んでいた。
父は高齢であり病院で長期入院をしている。このまま父に万が一のことが起きると、久しく会っていない弟と遺産分割で揉めそうである。父は頭がはっきりしている時と、同じことを繰り返す時があった。友人は誰に相談したらよいか分からず、近くの法律事務所に行くと、相談員から「うちでは難しいです」と冷たく断られてしまった。
友人から相談を受けた私は、すぐに〇〇銀行に連絡した。いまの状況で遺言書が書けるかを銀行員と一緒に検討することにした。いくつかの状況を想定しながら、臨機応変に対応せざるを得ないと判断した。
遺言書の作成にあたって、自筆遺言に比べ、公証人役場の公証人が作成し、第三者の証人が添えられている公正証書遺言の方が信ぴょう性は高い。友人は意を決して父に遺言書を書いてもらえるか?とそれとなく聞いてみると、父は快諾した。その後、銀行員と公証人が病院を訪問し、父の想いが詰まった遺言書が作成された。
先日、友人の父がご逝去された。この遺言書があったおかげで、円滑に相続手続きが進んだ。私は多くのファミリーとお付き合いがあるので、血を分けた兄弟が相続時の遺産分割争いで人間関係が疎遠になるケースをたくさん見てきた。
遺言書は子どもたちに残すメッセージである。残された資産を誰にいくら渡すかという配分を記載するだけでなく、最後に付言事項として、家族に対する想いを添えることができる。例えば「どのような想いで誰に資産を配分したい」や「いつまでも家族が仲良く過ごしてほしい」などをメッセージとして残しておくと、それを受け取った相続人は気持ちの整理をつけやすい。
「うちの子どもたちは仲が良いので相続で揉めることはない」と信じたい親の気持ちは分かるが、現実は違う。遺言書が無い場合、相続人は遺産分割に向けて膨大な労力と気苦労を要する。つまり親が進んで遺言書を残してあげることが家族への思いやりとなる。
友人からのメッセージを読みながら「お父様の想いが伝わって良かった」と、一度も面識のないお父様の優しさを感じるのであった。