【東信吾コラム】元スイスプライベートバンカーの幸せ探訪 Vol.3 平和な日本で自分ができること

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【東信吾コラム】を掲載しております。

 

 

2019年10月下旬、成田空港からミャンマーのヤンゴンに向かって飛行機が飛び立とうとしていた。私は貯めたマイレージポイントでビジネスクラスにアップグレードし、その機内にいた。

今回の訪問はミャンマーで建築した新しい学校のオープニングセレモニーに参加するためである。飛行機の前方のドアが閉められようとするその瞬間、黄色い民族衣装を着た女性が入ってきて、一番前のシートに座った。

私は目を見張った。「あっ! アウンサンスーチーさんだ!」自分の鼓動が聞こえた。

 

私が所属するNPOは2008年からミャンマーとの国境に位置するタイ北部のメーソトという街で、ミャンマー難民のための学校を3校運営している。各学校には、“国民の母”と呼ばれるアウンサンスーチー氏の写真が飾られており、人気は絶大である。

私は衝動が抑えきれず、機内で彼女に向けて手紙を書いた。ノートを一枚ちぎり、苦手な英語で「民主化プロセスにおいて、国内外から色々な意見がありますが、ミャンマー国民はあなたの熱意を信じています。日本からも応援していますので、ご健康に留意して、どうか頑張ってください」としたためた。彼女は日本での行事(天皇陛下の即位式)を終え、ぐっすりと眠っていたため、お付きの女性に手紙を渡した。

2021年2月、軍事クーデターが勃発し、ミャンマーの民主化プロセスは途切れた。軍事政権に捕らわれたアウンサンスーチー氏は、いわれのない多くの罪状を言い渡され、どこかに軟禁されている。

 
 

世界では紛争が毎日のように続き、多くの人命が失われている。日本に住む私たちは、遠くの国のできごとであるため、実感が湧かないのも当然である。

私が活動する神戸では、クーデター前はミャンマー人が300人ほど住んでいたが、現在は1,000人以上となっている。若者たちが日本語学校に来る名目で国外に逃げているのだ。彼らの日本での生活は大変である。

日本人は長い間、戦争を経験していない。仮にミャンマーやウクライナ、イスラエルのような急激な政情変化があった場合、何ができるだろうか。

 

私は富裕層から海外移住や海外口座の開設について相談されるが、ほとんどの富裕層はこのような最悪の状況を想定している。彼らは資産運用に関しても、日本円だけでなく、外貨に分散しておく必要性を感じている。心配ばかりしていても仕方がないので、私は彼らに「できる限りの準備をしたら、現在の自分の環境に感謝して、社会に良いことを一緒にしましょう」と話している。

 

私は長くプライベートバンカーをしながら、「自分のことやお金だけしか考えていない人」と「社会や他者を思いやる気持ちを持つ人」が醸し出す空気感が違うと感じている。さらに興味深いのが、社会を良くする活動をしている人の方が、人間関係に恵まれ、事業も円滑に進んでいるように感じる。

科学的な根拠はないが、地球や生態系が循環している中で、お金や想いを社会に循環させる方が、良い新陳代謝が生まれるのかなと勝手に思っている。

 

今まで忙しくて社会に良いことができなかった人は、少しずつ何かを始めていくのが良いと思う。自分が満足いく社会貢献活動を見つけるのは、時間も労力もかかる。企業でいえば、新規事業を始めるようなものだ。当初考えていたシナリオが変わることが多々ある。その過程を経て、自分なりの社会への関わり方を見つけていく。そう思うと、自らの置かれた環境に感謝して、できるだけ早く社会に良い行動をスタートすることをお勧めしたい。

一般社団法人ソーシャルビジネスバンク
代表理事 東 信吾
社会活動家/プライベートバンカー/不動産鑑定士

編集協力:グレートワークス株式会社
プロボノ活動として本記事の執筆を支援しています

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東 信吾
Azuma Shingo

一般社団法人ソーシャルビジネスバンク
代表理事

 

【経歴】
1974年生まれ
大阪大学経済学部卒、大和銀行(現りそな銀行)、シティバンク、日本不動産研究所、UBS、クレディ・スイス(西日本地域の営業責任者)

社会活動家/プライベートバンカー/不動産鑑定士

大学生の頃よりプライベートバンカーを志向する。
UBSアジアパシフィック地域において7年連続「ドラゴンクラブ」を受賞(日本人初)。
2015年、世界のトップバンカーの一人として「UBSサークルオブエクセレンス」を受賞
(唯一の日本人プライベートバンカー)。

2008年よりNPOのスタッフとして、タイ、ラオス、ミャンマー、カンボジアにおける社会貢献活動に参画。

2012年よりバングラデシュにて、グラミン銀行創設者でノーベル平和賞受賞者であるムハマド・ユヌス博士と自動車整備士養成プロジェクトを運営。

日本アントレプレナー大賞ソーシャルビジネス部門を創設(審査責任者)。
ソーシャルビジネスの普及活動に専念。


2022年より社会に「温かいお金」と「想い」を循環させることを目的に、一般社団法人ソーシャルビジネスバンクをスタート。日本で初めて金融商品仲介業を株式会社でなく、一般社団法人にて運営(組織形態及び定款は非営利徹底型)。


この法人では、

  1. 富裕層や企業オーナーを社会貢献活動の世界に導く
  2. 富裕層や企業の社会貢献活動をお手伝いする
  3. 金融商品仲介業務で得た法人利益から法人税納税後の内部留保の半分以上を、顧客の希望に即した社会貢献活動に充当する
自身は上記3事業を無報酬(ボランティア)で行っている。


(公財)東京コミュニティー財団理事
(公財)千本財団理事
(一社)明日へのチカラ理事 ほか

世界4大会計事務所のひとつであるEYグループの日本法人(EYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社)シニアフェロー

 

東信吾/azumashingo