グロービス経営大学院でのワークショップ
2025年1月
グロービス経営大学院は、在校生、卒業生が10,000人を超える日本最大のビジネススクールである。
2月の日曜日にグロービス経営大学院にて、私が作る社会貢献活動の取り組みを5パターンほど紹介する予定である。前半は私の話が中心で、後半は参加者自身で社会貢献活動のアイデアを考える。ワークショップが終われば懇親会があり、丸1日のプログラムとなる。
一般社団法人ソーシャルビジネスバンクを3年前にスタートしてから、多くの企業経営者や富裕層を社会貢献活動に巻き込みながら新しいプロジェクトを作ってきた。ボランティア活動であるため、モチベーションの源泉は自分が楽しいかどうかである。
これまで大学で外部講師という形で講義したことはあるが、大学生に対しては「これから社会人になるにあたっての心構えは…」と、まとめることが多い。ただ、今回はビジネスの最前線で活躍している社会人が参加するため、話しの力点を変えなければならない。大学生と社会人では見るポイントが異なる。しかも経営を学んでいる社会人からすると、「社会貢献なんて、きっと生ぬるい話しに違いない」と思うこともあるだろう。
うーん、なんだか怖い。大丈夫だろうか。
ビジネス書を読んでいると、たまに出てくる言葉がある。ひとつは、『アイデアは既存の要素の組み合わせ』である。スマートフォンが、パソコン×携帯電話×カメラの組み合わせであるのは皆さんもよく知っている。新しい商品は、すでに存在する財やサービスの組み合わせで作られることが多い。
次に、経営の神様のピーター・ドラッカーがいう『顧客の創造』である。レッドオーシャンの中で、いま見えている顧客を奪い合うゼロサムゲームでは疲弊する。そのため企業は潜在的な顧客の創造に注力しなければならない。今までの財やサービスに新しい体験や価値、意味を加えることで差別化を図るのみならず、まったく別の角度から新しい価値観を導入する場合もあるだろう。
ここで、私が2役を演じてみたい。
1.アントレプレナー(起業家)
お客様の課題を解決するために、今までにないサービスを作ろう。そのためには、既存の〇〇と△△を組み合わせて、新しい価値観や体験を提供しよう。この分野はまだ誰も取り組んだことがないので、時間がかかるが潜在的な顧客を育てていける。このビジネスに関わる関係者全員にメリットがあれば、長期的に経営していけるはずだ。
2.社会活動家
行政が解決できない社会課題を解決するために、複数の関係者(企業、寄付者、NPO法人)を組み合わせて、新しい支援の形を提供しよう。この分野はだれも取り組んだことがないので、時間がかかるが応援してくれる人が少しずつ増えていくだろう。関係者全員がハッピーになれば、持続可能な支援活動が継続できるはずだ。
この2つのストーリーは、なんだかよく似ている。
モノがあふれた現代では、無味乾燥な財やサービスでは、お客様の心に響かない。安さを追求すれば、もっと安いものとの競合になる。こんな時に、財やサービスがお客様の感情に訴えかける“何か”を持っており、購入する意味を提供してくれるなら、お客様は喜んで選択してくれるだろう。
私は、財やサービスに“温かい想い”を加えることが、顧客の創造につながるひとつの方法であると考えている。同じ想いも持った人が、別のところからやってくる。
社会貢献活動を作るにあたり、寄付者・NPO法人・受益者のすべてを満足させることができれば、それは温かい視点の持ち主である。その視点は企業経営にも通じる。
私のワークショップが、自身の感性に刺激を与えながら、全体最適をとらえる練習場になれば嬉しい。参加者は私の話を聞きながら感じるだろう。「なんともラフな状態からプロジェクトをスタートしている。綿密な計画ではなく実際に実行に移しながら、軌道修正や思考を整理している」と。
実際に手を動かさないと問題点は見えない。企業経営において、時間という経営資源は大切である。休日にわざわざ時間を使って参加してくれる皆さんに、少しでも参考になれば幸いです。
だが、ここで大きな問題がある。
私は人前で話すことが大の苦手であり、未だに赤面症が治らない。昔から質問に即答できない。そのためファシリテーターの方には、私にコメントを振らないようにお願いしている。なんとも格好が悪い。
こんな私を起用するグロービスさんの勇気ある決断に対して、心から敬意を表している。