社会の役に立ちたい想い
2024年6月
富裕層の中には社会を想う気持ちがあっても、「寄付」という行動に踏み出せない人が多い。社会が良くなって欲しいと願いながらも、真摯に活動しているNPOに寄付をすることができない。その理由は人それぞれである。
例えば、
- そもそも寄付に関心がない。
- どのNPOに寄付をしたら良いか分からない。
- NPOは信頼できない。
- 一度NPOに寄付したら、次回から寄付のお願いがくるので、断るのが面倒である。
それなら最初から関わらない方がよい。
など、寄付をしない理由はたくさんある。
私は社会貢献活動をしたいと思っている人に寄付活動を勧めることがある。
寄付金が社会に循環するうえで、私が最も大切にしていることは、寄付者が出したお金がどのように社会の役に立っているかを、寄付者に実感してもらうことである。
NPOの代表者は出来る限り寄付者にお金の使い道やその効果について丁寧に説明するのが良い。ところが世の中のNPOには、寄付者とNPOとの対話を省いて、システム的に寄付を集めようとする団体がある。もちろん効率的に寄付を集めたい気持ちは分かる。
しかし、寄付者は、いずれ物足りない気持ちになり、寄付を辞めてしまう。NPOは社会問題を解決しようと受益者(支援すべき子どもたち、動物、自然など)に愛情をもって対応している。実は寄付者自身もNPOから愛情をもって接してもらいたいと思っている。
こんな話をNPOにすると、「そうなんですね」「新しい視点です」と言われることがある。もちろん寄付者の中には、「何も言わずに寄付をすることが美徳」と考えている人もいる。しかし、多くの寄付者は「寄付したことに感謝してほしい」「寄付をした実感がほしい」と心の中で思っている。
寄付者は「自分のお金が少しでも社会の役に立っている」と実感することで、継続的に支援しようと思うものである。寄付者の実感が増えれば増えるほど、今度は「支援させてもらって有り難う」という感謝の気持ちが湧いてくる。寄付を通して社会のお役に立てることに感謝するのである。
私が行う寄付者とNPOの橋渡し役は、時間・労力・信用力が必要となる。この2年間で1億円以上の寄付金をアレンジしてきた。私がなぜ無報酬でそこまで出来るのかと言うと、これが私の社会的な役割だからである。寄付者が笑顔で「社会を良くする活動に参加できて良かった!」と言ってくれることが私への報酬になる。
経営の神様と呼ばれているピーター・F・ドラッカーは、社会貢献活動への参加を推奨している。「現代社会では、もはや直接的な市民性の発揮は不可能である。我々が行えるのは投票し、納税するぐらいである。しかし我々は社会活動への参加によって、社会的な秩序、価値、行動、ビジョンに対して直接的な影響を与えることができる」(出典「すでに起こった未来」)という言葉が、私の心に響く。
最初から大きなことは出来ない。小さな一歩からスタートしたい。